透析について
透析はいつから必要になるのでしょう?
腎臓病は末期腎不全になると下記のような兆候がみられます。
・体液貯留、尿量減少による浮腫み、呼吸苦・息切れ(肺水腫、胸水、心不全)
・尿毒症による食欲低下、嘔気・嘔吐、かゆみ
・高カリウム血症(危険な不整脈が出ることがある)、アシドーシス(血液が酸性に傾く)
・貧血の進行によるだるさ、息切れ
末期腎不全でこれらの症状が出た時には、すぐに透析を導入することとなります。
これらの症状が出るのは、腎機能eGFRが5~10ml/min/1.73㎡ですが、症状がなくても、少なくともeGFRが2ml/min/1.73㎡以上で血液透析を始めるほうが生命予後が良い、と報告されています。また、心臓や脳疾患、糖尿病など合併症がある方はeGFRが10ml/min/1.73㎡以上でも症状が出ることがあります。
腹膜透析の場合は、血液透析に比べてより腎機能が保たれている状態から開始することをお勧めします。
A.血液透析とは
一般的に「透析」、というと血液透析をイメージされるかもしれません。現在、日本の透析患者さんのうち、9割以上の方は血液透析をされています。
血液透析は、透析用の針を血管の2箇所に刺し、一方から血液を取り出して透析機械に通し、余分な尿毒素や水分、イオンを除去した血液をもう一方から体内に返す方法です【図1】。
血液透析を始める際には、針を刺して十分な血液を取り出すことが出来る血管を作る手術が必要で、それを「シャント」と言います(シャント以外の方法の場合もあります)【図2】。腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて、動脈から静脈に血液が流れることで、静脈が太くなり十分血流が流れるようになるのです。シャントの手術は、透析を始める前に受けていただくことが多いです。当院では、関連施設にてシャントの手術を受けていただけます。
血液透析は基本的には病院に週3回定期的に通院し、1回に3~4時間、専門のスタッフのもとに行います(その他、最近は在宅透析という方法もあります)。
図1
図2
B.腹膜透析とは
腸管や胃は腹膜という膜に覆われた腹腔内にあります(図1)。事前に手術で埋め込み、留置したチューブ(カテーテル)から約2Lの透析液を腹腔内に注入します。数時間留置したままにすることで、腹膜の毛細血管やリンパを通して(図2)、体内から尿毒素や水分、イオンなどが透析液内に移動します。貯まった透析液をカテーテルから体外に排出します(図3)。
この過程を1日に数回繰り返す、または寝ている間に機械を使って行うことで透析を行う方法です。
腹膜透析は自宅でご自分で出来るので、通院は月1~2回です。必要な機械や透析液のバッグは自宅に適宜届きます。カテーテルの出ている部分はご自分で定期的に消毒します。
患者様それぞれ異なりますが、腹膜透析を継続していくと、腹膜の機能が低下することがあります。十分な水分や尿毒素の排泄が出来なくなってしまった場合は、血液透析と併用したり、血液透析に変更する場合があります。
また、最初から腹膜+血液透析を併用して行う「ハイブリッド」透析という方法もあります。当院では、腹膜透析の管理を行うことができます。
図1
図2
図3
C.血液透析、腹膜透析の特性の違いについて
血液透析;通院回数が多いことにより、生活時間の制限がある。
専門スタッフが機械操作をすることで治療ができる。
水分制限など食事制限が多い。
合併症の管理が必要となることはあるが、長く継続することができる。
腹膜透析;通院回数が少なく、比較的ライフスタイルに時間を合わせることができる。
機械のセットや消毒など、ご自分で治療をする必要がある。
食事制限は血液透析よりは緩い。
腹膜透析を継続する年数に限りがある。
どのような方法が良いのかは、お一人お一人で違いますので、専門医、スタッフと相談して決めることが重要です。また、血液透析であればシャントの手術を、腹膜透析であれば、カテーテル挿入の手術を、事前に受けておく必要があります。
D.血液透析と水質のこと
日本の透析医療は世界でも非常に高水準と言われています。その理由の一つには「水質」があります。
血液透析は、ダイアライザーという機械の中で、透析液と血液の間で物質交換、ろ過を行い、いらないものを取り除いた血液を体内に返します。そのために、1回の透析で100L以上の透析液を使用します。
透析液は、水道水を機械で処理し不純物を取り除いて作成されます。汚染されている水を使用すると発熱や炎症、ショックなどをひき起こすことがわかっています。
血液透析の種類の中で、近年オンラインHDFという治療が行われています。オンラインHDFの仕組みは省きますが、この方法では透析液が体内へ直接入る治療のため、綺麗な透析液で治療をすることが重要となります。
当クリニックは、非常に綺麗な透析液を作成する機械を備えており、より患者様の体に適したオンライン治療が可能となっています。
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